海外の太陽光発電事情
今、日本では太陽光発電に大きな注目が集まっていますが、海外では、太陽光発電はどのような状況にあるのでしょうか?
海外でも、太陽光発電が普及してきています。2012年国連環境計画(UNEP)は、2011年に世界の太陽光発電を含む再生可能エネルギー開発への投資額が2,570億ドル(約20兆7千億円)に達したと報告しました。
大規模な太陽光発電(出力がメガワット単位の)メガソーラーの普及は、海外のほうが進んでいます。アメリカ、オーストラリアといった国々でメガソーラーの建設が盛んです。
住居型の太陽光発電システムについて言うと、技術的には日本はもちろん世界の先進国です。
ただ、普及という面では、政策、制度の点から日本の数年先を歩いている国があります。それはドイツとスペインです。
ドイツとスペインの現状
ドイツの法律では、電力会社に対して、太陽光を含めた再生可能エネルギーから発電された電力を、固定価格で20年間買い取らなければいけない、という義務を課しています。
売電価格は、1kWhあたり0.41~0.57ユーロということですから、日本円に換算すると約45円~約63円となります(1ユーロ110円で計算)。
売電価格が買電価格より高くなると、電力会社にとっては逆ざやになってしまいまずが、この逆ざやでの損失分は、国民全体の電気料金に上乗せされています。
この仕組みは「固定価格買取制度」(FIT:Feed-in Tariff)と呼ばれています。太陽光発電に限らず、再生可能エネルギーの設置量を大きく増やしている国の多くが採用している制度です。
スペインも同様の仕組みで太陽光発電を普及させてきました。
どのくらい普及が進んでいるのでしょうか。ドイツでは、2010年には再生可能エネルギーで電力の約16%をまかなっています。日本は水力を含めて約9%です。
どちらの国も、国からの補助金+固定価格買取制度を柱に太陽光発電を普及させており、日本のいわばお手本となる国なのですが、このところ雲行きが怪しくなってきました。
固定価格買取制度が原因で、電気料金が高騰してしまったのです。それに伴い、固定価格買取制度の段階的な引き下げが行われ、勢いがしぼんでしまっています。
ドイツの太陽光発電メーカーは、中国メーカーなどとの価格競争に巻き込まれ、一時は世界のトップメーカーだったQセルズまでも破たんしてしまいました。
つまり太陽光発電が産業として根付くのは難しく、国の優遇政策に乗った「太陽光バブル」に過ぎなかったわけです。
このままでは日本も同じ道をたどることになる可能性があります。
将来のあるべき姿
太陽光発電が将来、一定程度の電力供給を担うようになるには、固定価格買取制度に頼らず、メーカー各社が発電コストを低減し、電力会社の家庭向け電気料金と同等以下になる「グリッド・パリティー」の実現が必須となります。
太陽光発電のコストが下がる一方で、電力会社の電気料金は火力発電を主力とするため上昇傾向にあり、その差は縮まりつつあります。専門家の間では、「グリッド・パリティー」は2015年ごろには実現可能なのではないかと見ています。
日本でも、今は国の政策によって補助金が出され、固定価格買取制度により高い単価で買取りが行なわれているために、太陽光発電の普及が進んでいます。
でも、そうした政策的な補助がなくなっても、最初の導入と売電での採算が合うようにすることが、太陽光発電の長期的な発展には必要なわけです。
ぜひ、今後の動きに注目したいと思います。
2012年11月10日